長年のファンも多い「江戸屋」の刷毛は唯一無二

日本橋・大伝馬町で刷毛とブラシの専門店を営む「江戸屋」は創業300年を超える。長い歴史の中で、日本人の生活様式の変化も見守ってきた。「昔はどの家庭にも障子があったので、お正月前になるとみんな刷毛を使って障子貼りをしましたが、今はもう障子がある家がなくなってきていますよね。また反対に、今の様式に合わせたブラシもどんどん増えています」。

現在江戸屋で扱うブラシや刷毛はおよそ3000種類。ヘアブラシや化粧用のブラシなどは、使い勝手が良いことから女性たちの間で評判を集めている。長年使い込まれたヘアブラシを持つお客様に出会ったことも。「女優さんのヘアを担当するヘアメイクさんが、30年前にうちで買ったというブラシをお持ちだったんです。毛の部分がもう半分ほどになっていたので、新しいものを差し上げますよ、とお伝えしたのですが、これがいいんだ、これで1000人以上の女優の髪をやってきたんだよって。刷毛屋冥利につきますね」。

多くの人から長く愛され続ける江戸屋のブラシは、お客様の声から生まれた製品も多い。「お風呂用のボディブラシを細身の孫の手の先につけた孫の手ブラシなどもご要望でお作りしました。昔からあるものでも工夫をしたり、ありそうでないものを作っています。作ったものがすぐに売れなくても、後から時代とともに評価されることもありますね。昔からやっていることは変わらないですが、丁寧に良いものを作っていくことが大切だと思っています」。かゆいところに手が届く製品でお客様の期待に応え続けてきた江戸屋。これからも人の生活を豊かにしていくに違いない。

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