職商人としてのこだわりを守り続けていく

打刃物の製造販売を専業に行う「うぶけや」。メイン商品のひとつでもある裁ちばさみに関しては、日本で最初に販売を始めた店だと言われている。「築地の居留地からの依頼により当時の職人、弥吉(やきち)に造らせたはさみが、お客さまから「よく切れる」と評判になったそうなんです」。

評判の裁ちばさみはうぶけやを代表する商品になり、一般家庭から服飾関係者まで幅広く愛用されている。「ご家庭用でしたらかなり長い間お使いいただけます。おばあさまが嫁入り道具に持ってきたはさみをお孫さんが修理に持っていらして、はさみを磨き上げてお返しすると、新品同様に切れ味が戻ったと喜んでいただけることもありますね」。

この街で長く商売を続けている間、時代の変化も感じてきた。「うちの裏手の富沢町から小伝馬町にかけて、以前はかなり和装を扱うお店が多かったんです。その方たちにうちのはさみを使っていただいていたのですが、和装の需要が減って研ぎの仕事も少なくなってきました。その後に新しいマンションが立ち、昔はプロ用の道具中心だったのが、今はご家庭用の道具類が地元の需要としては増えてきましたね」。

「この50年で世の中はものすごく変わりましたし、これから先も加速度的に変わっていくと思うんです。ですから今後この仕事がどうなるかというのは見当もつかないのですが、どんな時代が来てもうぶけやは人形町にあり、代々の当主が職商人であってほしいというのが私の願いです」。お客様と直に向き合いながら良い商品を作り、届けていきたい。時代が変わり続ける中でも、変わらぬ想いを持ち続けている。

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