箒作りに大切な素材を守り、伝統の形を作り続ける。

江戸時代から続く伝統の『江戸箒』の製造販売を行う「白木屋伝兵衛商店」。江戸箒と呼ばれる商品は店のオリジナルで、熟練の職人たちの手仕事によって作られている。「箒の素材はホウキモロコシという、とうもろこしのような草です。収穫はほぼ手作業の重労働なので、だんだんと作り手が減ってしまい、3年前から中央区にお願いして、友好都市である山形県東根市のJAの研究生の方にも作ってもらうようになりました」。

東根市は、さくらんぼの『佐藤錦』の生産量日本一としても知られる、果物栽培が盛んな地域。果樹栽培は箒草と同じくほとんど手作業で行われることから、農家の方々との相性も良かった。また、箒草はちょうど果物の端境期に収穫を迎えるため、栽培を受け入れてもらえたという。「果物栽培は猿や猪などの獣害がひどいそうですが、うちの場合は草に身が入る前に青田刈りしてしまうので、動物にも食べられない。そういう意味では果物よりも手がかからないところもありますね」。

日照時間が短い年などは、草の穂丈が足りなくなることや、日に焼けて草が変色してきてしまうことも。「これで作れるものはないかと考えて、従来品より小さな箒を作りました。そしたら予想以上に売れたんですね。今は賃貸住まいも増えてライフスタイルが変わってきているから、小さい箒を求めている方も多かった。小さければその分値段は安くできるので、じゃあそういう層に向けて作ってみるかと、新しいラインができました」。不作の年の対策が新たな商品を生み出した。この柔軟性こそが、長く商売を続ける秘訣かもしれない。

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