江戸のオリジナリティを生み出した竺仙の着物

天保時代から180年以上続く老舗呉服店の『竺仙』。代表の小川文男さんに、店名の由来を伺った。「初代は背が低く、チビの仙之助だったので、『チビ仙』というあだ名で呼ばれていたそうです。商いをやっていく中で、役者仲間たちから「ちんちくりんのちくに仙之助の仙で竺仙としたらどうだ」と言われたというようなことが昔の本に書かれています。そしてもう一つ、民俗学者の方曰く、『天竺から来た仙人』だという説から、竺仙になったとも言われています」。

江戸時代初期は、京都・大阪からあらゆる文化が江戸に伝わってきた頃。江戸ならではのオリジナリティのある品物はほとんどなかったのだという。「当時の浮世絵などを見るとわかるのですが、例えば浴衣ですと名古屋の方の有松から来た絞りの浴衣や無地の浴衣だとか、そういうのを着ていたんです。それがやはり江戸っ子から見た時にあんまり格好良くないということから、江戸の人間に「これはいいな!」と思われるようなデザインができないだろうかという声があって、竺仙はそういう声に応える形でその世界に入っていったのでしょうね」。

「こういうものを頼んだ時に竺仙だったらどういうのを作るだろうか、と世の中に問われて、江戸の人たちの趣味に合うような品物を作ったことがお陰様で世間に受けたのではないかと思います」。一目見ただけでも竺仙のものだとわかる粋な色柄や生地選びは、日本の着物の中でも唯一無二の存在感を放っている。

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