好きなものへの熱量と粋な遊びが仕事を結ぶ
「濱甼髙虎」が店を構える日本橋浜町は、かつて料理屋さんも多くある街だった。「三味線の音色や長唄が聞こえたりとか、料理屋に芸者さんを呼んで遊ぶような時代がありました。2代目の髙橋欣也は若い頃から小唄をやっていて、この仕事部屋でお師匠さんの出稽古を受けていました。僕は近くでそれを聞きながら仕事をしていて、これはいいぞ、と思いましたね。それで自分もやりたくなって、同じお師匠さんから口移しで教わりました」。
仕事中に学んだ小唄から生まれた商品もある。「写真左の手ぬぐいは『待てと言うなら五年はおろかやなぎ新芽の枯れるまでとかく浮世は気散じなのほほんで暮らしゃんせ』っていう、芸者と旦那の色恋の歌。唄をやっている間に、これだったら手ぬぐいの図案ができるな、って浮かんでくるんです。絵を描いて型を彫って、手ぬぐいを染めたら商売になっちゃう。唄の稽古でお金は積むんだけれど、アウトプットすることでまた回ったりするんですよね。そういう風に形になったものが誰かの手に渡って文化が残っていく、それってすごく理想的だなと思います」。
髙林さんは、心から好きだと思えることだけを続けていると言う。「魅力を感じてもらえるようなものを作り出せる熱量を自分が持ってることが大切なんだと思っています。そうじゃなかったらあの人に頼みたいな、っていう構造も成立しないはずだから。ものづくりをする上で必要なのは熱でしょうね。それがないと多分、艶やかにはならないよね」。濱甼髙虎の商品は、職人の熱量と技術を持って粋な江戸文化を表現し続ける。