刃物の製造販売を行う「うぶけや」は、包丁・はさみ・毛抜きの三本柱を中心に、300点ほどの商品を取り扱っている。今回は8代当主の矢崎豊さんにお話を伺った。

「産毛でも剃れる」評判から名付けた老舗の刃物店

刃物の製造販売を行う「うぶけや」は、包丁・はさみ・毛抜きの三本柱を中心に、300点ほどの商品を取り扱っている。今回は8代当主の矢崎豊さんにお話を伺った。

初代から、自分の店を構えて奥の工房では職人仕事をするという『職商人』のスタイルをとっている。「新しい商品の研磨調整をして店頭に並べお客様をお待ちしております。また、お持ちいただいた刃物のお研ぎ直しも承っております」。販売店でありながら刃物のメンテナンスまで引き受けるこの形態は、現在の刃物店では少なくなっているという。

創業は1783年(天明3年)と、200年以上続く老舗だ。「創業の地は大阪で、江戸に出て来たのが1800年初頭。最初は長谷川町(現在の堀留町)に江戸店として出店し、明治維新の前に新和泉町(現在の人形町)に移転して今に至ります。私で8代、9代候補の息子も現在修行中です」。

創業には、刃物が売れる時代背景があったという。「江戸時代は平和な時期が続きましたから、趣味や食文化がどんどん発展しました。包丁でも、野菜用の菜切り包丁、魚用の出刃包丁等、用途別に種類が増えてきましたし、包丁以外も様々な刃物の需要が高まったのではないかと思います」。

「うぶけや」という印象的な店名の由来を尋ねると、「初代の㐂之助(きのすけ)が大変腕の立つ職人で、彼が打った包丁、はさみや毛抜きが『産毛でも剃れる、切れる、抜ける』と評判が立ちました。それで㐂之助が店を構える時に、お客様がそう言ってくださるなら屋号はうぶけやにしようと決めたそうです。ですから私どもの屋号はお客様から頂戴したと言っていいのではないでしょうか」。現代に続く長い歴史は、お客様との交流から始まっていた。

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