「武士は食わねど高楊枝」粋な江戸文化を現代に

1704年(宝永元年)創業の「日本橋さるや」は、江戸時代から300年以上続く老舗の爪楊枝専門店。お話を伺った山本亮太さんで9代目となる。創業の地と言われている日本橋小網町から、2013年に現在の店舗に移転し、7年目を迎えた。 「歯間用と和菓子用の爪楊枝専門店です。徳川三代頃には世の中に多くの楊枝屋があり、それが段々と少なくなっていった中で残ったのがうちですね」。

店名の由来を尋ねると、二つの説があるという。「猿は虫歯がなくて歯が白いんですよね。それで楊枝屋の看板に猿が良いということが元禄時代の文献に書かれています。一つ目は、そこから採用したという説。それから、昔は猿を看板娘のように連れて歩いて楊枝を売っていたのを『さるや』と呼んでいたという説があり、僕はどちらかというと後者かなと思っています」。

今でこそ当たり前に使っている爪楊枝だが、元の形からは大きく変遷している。「江戸時代は『房楊枝(ふさようじ)』という歯ブラシと歯間ブラシがセットになったようなものがあり、形を変えて今の細い爪楊枝のスタイルになっています。明治時代には洋式の歯ブラシが入ってきて、歯ブラシの普及とともに房楊枝は減ってきたようです」。

歯の掃除に関しては歯ブラシの方が便利ではあるけれど、楊枝文化はなくならないだろうと山本さんは語る。「楊枝は食後のエチケット。『武士は食わねど高楊枝』という言葉もあるように、粋な江戸文化の象徴にもなっています」。

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