世界に広がる団扇と扇子の魅力
団扇と扇子の老舗として日本橋で400年の歴史を持つ『伊場仙』。当主の吉田誠男さんは、この数年における扇子市場の変化を肌で感じてきた。「5、6年前は世界的なテニス大会の観戦では扇子を使ってはいけなかったんですよ。パタパタすると選手の気が散ってしまうということで、動くものは禁止だったのですが、地球温暖化で暑くなってきたので、2年前から扇子が使用可能になりました」。
「今は応援グッズとして、FC東京のスタジアム扇子なども作っています。来年は日差しが強くなりそうなので、UVカットの布を使った団扇や扇子も開発しようと思います」。需要に応え、新製品の開発にも積極的に取り組んでいる。
中央区日本橋には、伝統工芸に興味を持った海外からの観光客も多く訪れる。彼らはどんな商品を魅力的に感じているのだろうか。「人気なのは浮世絵柄の扇子ですね。葛飾北斎の『波裏』や『赤富士』とかね。日本らしさが出ているものに興味を持っていただく傾向にあります。ドラえもんなどのキャラクターコラボ商品も人気です」。
海外からも注目を集める団扇や扇子は、国内でも需要の幅を広げている。「最近は花火大会に行く高校生や大学生にお求めいただいて、ありがたいですね。若い人は扇ぐものというよりアクセサリーとして使っているようで、小さいサイズのものが人気です。浴衣の後ろに挿したり、あとはバッグに入るくらいのサイズを選ばれますね。浴衣と団扇はセットですから、浴衣と同じ柄にしたりね。『竺仙』さんの浴衣とコラボしている団扇もありますよ」。粋な団扇と揃いの浴衣をまとい、夏を満喫する。そんな人たちがこれから益々増えていくのかもしれない。