人と人の縁を紡ぐ、組紐に課せられた使命

伝統工芸品の組紐を作り続ける「龍工房」福田隆さんは、工芸品の未来の在り方を常に考えている。龍工房でも組紐づくりを体験することが可能だ。

「東京には組紐を含めて41品目の伝統工芸品がありますが、実はこんなにたくさんある都道府県は他にないんですよ。それなのに東京のお子さんは伝統工芸というものに接する機会が少ない。そう考えると、我々の住む東京という街において、伝統工芸というものがこれだけあるのだというのを気づいて頂きたいですし、小さい時に体験したり触れたものというのは一つの財産になるのではないだろうかと思って、体験会の取り組みを行っています。体験を通じてものを作る喜びや大変さや美しさ、そんなものを感じてもらえたらうれしいなと思っています」。

龍工房は、第二次世界対戦時にも看板を下ろさずに仕事を続けていたという。「軍事産業であるパラシュートの紐を組ませていただいていたんです。人の命を守る紐を作り、生きていくことができました。『組紐』という漢字はどちらも糸偏なんですね。繋ぐ、絆、縁、結ぶ、ちょっと考えただけでもこんなに糸のつく漢字が出てくるんですが、糸には人と人を結びつけ合うもの、そういう使命感があるような気がしています」。

組紐という独自の技術を磨き、様々な場所に活用の場を広げてきた。「僕らが目指すのはやはりオンリーワンの仕事。うちの技術でしかできないことで世間のお役に立てることです。近年新たな素材や商品開発も、次の世代の息子が目を輝かして取り組んでいますので、私はうれしくてたまらないのです」。熱い思いは、次世代へと確実に紡がれている。

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