古式ゆかしい掛け軸は、現代の生活様式に合わせる柔軟性も

日本の住宅が洋風に変化する中、近年は表具の使用が少なくなりつつあるという。床の間がなければ、大きい掛け軸を作っても掛ける場所がない。そんな経緯もあり、ものづくりにも変化が必要だ。「最近では洋間や棚の上などに掛けられるよう、掛け軸をあえて短めに仕立てることも増えています」。現代の様式に合わせた工夫で、伝統工芸をお客様へと届けている。

部屋に飾る掛け軸は、季節に合わせた絵柄を選ぶのが一般的。「片付けるときは、晴れてカラッとした日にほこりを払ってからしまいます。しまいっぱなしも良くないので3カ月に一度くらいは出して掛けてみてください」。四季の移り変わりを意識できるのもまた、掛け軸の楽しみの一つだろう。

店頭には掛け軸が飾られたショーウインドウがあるが、これができたのは今からおよそ20年前。「友人に『内田ん家は何の商売だかわからない』と言われたことがあったので、改装してウインドウを作り、経師屋だとわかるように表具作品を置くようになりました」。

「通りがかりで目に留めて購入を希望してくださるお客様もいらっしゃいましたし、知られるように飾っておかないとダメなんだと気が付きました。そういう意味でも、変なものは置いておけないですね」。展示作品に限らず、内田さんの手元には複数の作品があり、店内での閲覧・購入も可能だ。希少な工芸作品に触れられる機会は意外なほど身近にある。初めて掛け軸を手に取るという方も、ぜひお店に立ち寄ってみてはいかがだろうか。

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