父から受け継ぐ、表具の「粋」と「品」へのこだわり

表具師の内田幸三さんは、日々の仕事の傍ら、表具の作品づくりにも取り組んでいる。毎年5月に東京都美術館で行われる「表具・内装作品展」にも出展し、都知事賞を受賞するなど高く評価されてきた。

「お客様や仲間が楽しみに待っていると言ってくれるので、毎年気が抜けないですね。この作品では、砂子の紙を活かせないかと考えました。間に金の筋が入っているでしょう。黒い紙を一度切り離し、裏から細い砂子の紙で繋げています」

作品づくりのこだわりは、「他にないような目を引くもの、それでいてくどくないもの」とのこと。「格子の部分は、元からこういう裂地なのだろうとか、線だけを貼り付けていると思われることが多いのですが、実際は白い紙の上に茶色の紙を裏打ちして作っています」。どの作品も細やかな工夫が凝らされている。数々のデザインの発想はどこから来るのかと尋ねると「親父の真似だね」と笑う。

素材や色柄選び、制作の技術も全て父から教わった。新しいデザインを考える時もまた、父の仕事を思い浮かべる。「父がお客様に色々な提案をしているのを見てきたので、見本帳にある型通りのものではなく、どこか気が利いていなければという想いがあります。ここ日本橋で仕事をしているものとして、江戸らしくさらっと粋で、品があるものを目指しています」。

一般家庭には少々馴染みの薄い屏風であったが、意外な活用法が。「秋になると涼しくなってくるので、枕元に並べて枕屏風として風除けに使っています。頭や首元が寒くならないので風邪予防にもいいんですよ」。現代でも十分活躍しそうな一品だ。

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