江戸染物に魅せられ、職人の道へ
浜町公園の目の前に位置する「濱甼髙虎」。江戸時代に紺屋(染物屋)を前とし、現在はそのの技術を生かしながら染色加工品の製造と販売を行なっている。半纏、手ぬぐい、暖簾、風呂敷に袋物など、商品は多岐にわたる。
今回は髙虎のものづくりを担う職方の髙林晋さんにお話を伺った。「自社で図案を起こした商品も販売していますし、お客様から直接オーダーいただいて暖簾や手ぬぐい、町会で使う半纏なども作らせていただいています」。
髙林さんがこの仕事を始めたのは、30年ほど前。美術や服飾デザインを学んだのちにグラフィックデザイナーとして広告代理店に勤務していたが、「いわゆる商業デザインっていうものにどうも向いていないような気がして、もっとお客様と直接向き合えるような仕事がしたいなと。それと僕は浜松生まれで、浜松の大きなお祭りを楽しんでいる人たちが使う半纏などを作れるようになりたいと思ったんです」。
「半纏なら江戸を超える洗練されたデザインや染め方を持っている街っていうのは少ないなと思い、そういう粋な江戸らしいものが作れるようになりたいと思ったのが始まりです」。家業の継承ではなく、外の世界から髙虎の門を叩いた。「本来ならこの地で生まれ育って江戸らしさが染みついた人がやるのが理想的だとは思いますが、それも少なくなっていて。自分は江戸っ子じゃないけど、今までやってきたことを生かしてできないことはないし、とりあえず手だけ上げてみようってやってきたんです」。美術にファッション、デザインと、あらゆる分野での経験が今の仕事にも確かに息づいている。