江戸将軍家お抱えの刷毛師から続く伝統の品
江戸刷毛と様々なブラシを取り扱う日本橋大伝馬町の「江戸屋」は、享保3年(1718年)に創業し、300年以上の歴史を誇る。今回は12代店主の濵田捷利さんにお話を伺った。「徳川吉宗公が将軍の頃に刷毛屋としてスタートしました。当時、鉄砲の玉を打つと火薬のカスが溜まっていたので、それを取るためのブラシを考案して幕府から表彰を受けたのです」。
初代の刷毛師・利兵衛が作っていた刷毛が評判となり、御用商人と共に江戸城に入って、襖や屏風に使う経師刷毛や漆器を塗る漆刷毛などを作っていたのだという。「江戸城へ上がってく時に、幕府の方からお前のところも名前をつけなさいと言われて、『江戸屋』という屋号を頂きました」。
時代とともに、刷毛の需要にも変化が見られた。「明治以降、生活が洋式化していく中で、ものを作るための刷毛のみでなく、日常生活の身だしなみに使うブラシの需要が高まりました。洋服用や靴用ブラシなど、生活に密着した商品が増えていきましたね」。
江戸屋で扱う商品は現在およそ3000種。用途に合わせて人毛や馬、山羊などの天然毛や化学繊維、金属など様々な素材を使用している。「お客様からのこんなものが欲しいというご要望にお応えして品物を作っている間にどんどん増えていっちゃったんです」。多くの人たちからの多様な要望に応え続け、信頼を得たたからこそ今の歴史があるのだろう。