団扇と扇子、二つの違いは骨選びにも
江戸時代から団扇や扇子など、和紙を使った小物の製造販売を手がける『伊場仙』。14代目当主の吉田誠男さんに、団扇の種類について伺った。「京団扇と江戸団扇というのがあります。京団扇はお公家さんや貴族が使っていたものなので、一本一本手描きで絵付けをするのですが、江戸の団扇は印刷技術を使って大量生産ができて、庶民でも使える団扇になりました」。
商品の『伊場仙らしさ』のポイントは、「やはり『粋』な感じですね。江戸の団扇や扇子は、メリハリのあるくっきりとした吉原つなぎのような柄が主流になります。時代とともに絵柄は変化していて、昔は花魁や役者絵などが多かったようです。京扇子は絵の題材が花鳥風月だったり、ほわっとした色使いの艶やかな雰囲気が多いんです」。
団扇と扇子を作る工房はそれぞれ異なる。また、現代の扇子や団扇は観賞用でないので、実用性も重要だ。簡単に折れないための素材選びにもこだわっている。「団扇の工房は房州(現在の千葉県南部)、扇子は東京・京都・滋賀が中心です。骨に使う竹も全く違うんですよ。団扇の骨には千葉の館山あたりで取れる弾力のあるものが一番ふさわしいのですが、扇子はさらに繊細な技術で作られるので、より硬くて弾力のある竹が必要です」。
扇子に適しているのは、工房もある滋賀県の琵琶湖周辺の竹なのだとか。「冬寒くて夏が暑い地域というのが重要です。雪が降って、その重みでしなるでしょう。扇子の骨にはそのしなりに耐えられるような硬さと弾力が必要なんです。団扇の竹は硬過ぎるとかえって風が来なくなってしまいますから、柔らかい館山の竹を使用しています」。意外と知られていない二つの違い。商品を手に取り、改めて感じてみてほしい。